入れ歯と味覚変化

実践!口腔ケアマニュアル

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訪問診療では義歯関連の治療が全体の6割以上を占めます。それだけに、訪問した歯科医師や歯科衛生士は、入れ歯に関する質問をよく受けます。

患者さんの口腔ケアをしっかり行っている介護者から受ける質問で多いものが、「入れ歯を入れると、味覚障害が起きるのではありませんか?」、「なぜ入れ歯が変色するのですか?」というものです。

味覚障害は、入れ歯の装着の有無にかかわらず、加齢によって起こる生理的現象です。個人差はあるものの、味覚は年をとるほど低下していくと言われています。

しかし、初めて入れ歯を装着する人の場合は、異物感等により心理的に味覚障害を起こす方もいます。入れ歯を装着することで、味覚に変化が起こる直接的な要因として、材料的要因と補綴的要因があります。

■材料的要因
入れ歯の大部分はプラスチック(レジン)でできているため、それ自体が水分を吸収します。このため、唾液や食品の水分、食品中の色素や着色剤等が入れ歯内に浸透し、食べ物を食べた後もしばらくそれらの味が残ってしまいます。これが味覚に影響を与えることがあります。

■補綴的要因
入れ歯を装着すると、口腔内の粘膜部分が覆われるため、一時的に味覚障害や発音障害が起こることもあります。これは、粘膜に対する舌の触刺激や、食べ物を口に入れたときの粘膜の圧刺激が、入れ歯によって妨げられるからです。また、温熱刺激や食品の質感刺激も低下することがあります。さらに、入れ歯の装着によって口腔内が狭くなり、舌の動きが抑制されることで、味覚の低下を感じることもあります。

しかしほとんどの人は、しばらくすると入れ歯に慣れてくるので、過度に味覚障害を気にする必要はありません。

入れ歯の変色の原因は、主に材料であるプラスチックの劣化、金属部分の酸化や硫化によるものです。また、プラスチックの吸水性から、歯垢や食品中の色素が入れ歯表面について染み込むことでも着色します。

着色したものを落とすには入れ歯洗浄剤も有効ですが、次亜塩素酸系の入れ歯洗浄剤は着色に対して強力な脱色効果があり、金属やプラスチックまで変色させてしまうことがありますから、使用は数日に1回ほどを目安とするとよいでしょう。この他にも、超音波洗浄機を使った手入れなどの方法もありますが、歯科医師の指導を受けて行うのが最も効果的です。

「入れ歯と味覚変化」のまとめ

ここがポイント
  • 入れ歯を入れた当初に感じる味覚変化は、入れ歯に慣れていくことで解消していく
  • 入れ歯の着色による変色を解決するには、次亜塩素酸系の入れ歯洗浄剤が有効

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