医科との連携と報酬

訪問診療では多職種との連携が重要です。ここでは、訪問診療に関連する医科との連携の報酬を整理します。

情報提供

訪問診療に関連する情報提供の主な報酬は、診療情報連携共有料、電子的診療情報評価料と診療情報提供料(Ⅰ)、診療情報提供料(Ⅱ)、連携強化診療情報提供料の5つです。

1. 診療情報連携共有料(情共)

診療情報連携共有料の対象となるのは、慢性疾患を有する患者又は歯科診療を行う上で特に全身的な管理の必要性を認め検査結果や診療情報を確認する必要がある患者です。

患者の同意を得て、別の保険医療機関(歯科診療を行うものを除く)で行った検査の結果、投薬内容等の診療情報について文書により提供を求めた場合に算定します。

保険医療機関ごとに患者1人につき120点を診療情報の提供を求めた日の属する月から起算して3か月に1回限り算定します。

なお、特別の関係にある保険医療機関に対して診療情報の提供を求める場合には、この診療情報連携共有料は算定できません。

診療情報連携共有料は、診療情報提供料(Ⅰ)を算定した月は別に算定できません(同一の保険医療機関に対して紹介を行った場合に限る)。

2. 電子的診療情報評価料

別の保険医療機関から診療情報提供書の提供を受けた患者に係る検査結果、画像情報、画像診断の所見、投薬内容、注射内容、退院時要約等の診療記録のうち主要なものについて、電子的方法により閲覧又は受信し、当該患者の診療に活用した場合に30点を算定します。

3. 診療情報提供料

診療情報提供料の(Ⅰ)と(Ⅱ)について説明します。

(Ⅰ)は、患者を他の保険医療機関へ紹介した場合に、(Ⅱ)はセカンドオピニオンを求める患者や家族に対し必要な診療情報を文書で提供した場合に算定します。

介護保険の居宅療養管理指導費を算定した場合、情報提供の対象によっては診療情報提供料を算定できない場合があるので注意が必要です。

■診療情報提供の対象と内容

対象 提供する情報 備考
保険医療機関 診療の必要を認めた患者の紹介
市町村、保健所、精神保健福祉センター、地域包括支援センター、指定(介護予防)居宅介護支援事業者等、指定特定相談支援事業者、指定障害児相談支援事業者等 保健福祉サービスに必要な情報 同一月に介護保険の居宅療養管理指導費を算定した場合には算定できない
保険薬局 必要を認めた在宅患者訪問薬剤管理指導に必要な情報
介護老人保健施設、介護医療院 患者の紹介

診療情報提供料Ⅰ(情Ⅰ)

診療に基づき別の保険医療機関での診療の必要性を認め、これに対して患者の同意の上、診療状況を示す文書を添えて患者の紹介を行った場合に月1回限り250点を算定します。

レントゲンフィルム等をコピーした場合、このレントゲンフィルム等及びコピーに係る費用は診療情報提供料に含まれるので別に算定はできません。

次の場合は、診療情報提供料(Ⅰ)は算定できません。

  • 抜歯の適否について、患者の全身状態を文書で照会しただけの場合。
  • 在宅患者連携指導料を算定している場合。

診療情報提供料(Ⅰ)には、3つの加算があります。

退院時診療状況添付加算(情1加1)

患者の退院日の属する月またはその翌月に、別の保険医療機関、精神障害者施設又は介護老人保健施設若しくは介護医療院に対して必要な情報(退院後の治療計画、検査結果、画像診断に係る画像情報その他の必要な情報)を添付して患者の紹介を行った場合、200点を算定できます。

歯科診療等特別対応連携加算(情1加2)

基本診療料に係る歯科診療特別対応加算を算定している患者または、歯科訪問診療料を算定している患者が加算の対象となります。

患者またはその家族の同意を得て、診療状況を示す文書を添えて患者の紹介を行った場合に100点を加算できます。

ただし、同一月に介護保険の居宅療養管理指導費を算定した場合には算定できません。

診療情報提供料(Ⅰ)250点の加算①100点

検査・画像情報提供加算(情1加4)

患者の紹介を行う際に、検査結果、画像情報、画像診断の所見、投薬内容、注射内容、退院時要約等の診療記録のうち主要なものについて、電子的方法により閲覧可能な形式で提供した場合又は電子的に送受される診療情報提供書に添付した場合に加算します。

この加算は、「退院する患者の場合」と「入院中の患者以外の患者の場合」で点数が異なります。

退院する患者について、当該患者の退院日の属する月又はその翌月に必要な情報を提供した場合は200点を算定します。その際には退院時診療状況添付加算 (情1加1)は算定しません。

入院中の患者以外の患者について必要な情報を提供した場合は30点を算定します。

この加算の算定には施設基準の届出が必要です。

診療情報提供料Ⅱ(情Ⅱ)

治療法の選択等に関してセカンドオピニオンを求める患者又は家族の要望に基づき、治療計画、検査結果、画像情報その他必要な診療情報を文書で患者に提供した場合、患者1人につき月1回限り500点を算定します。

連携強化診療情報提供料(連情)

150点を算定しますが、紹介元や患者により、次の3つの場合が考えられます。

  • 患者を紹介した別のかかりつけ医機能を有する保険医療機関等からの求めに応じ、患者の同意を得て、診療状況を示す文書を提供した場合は、月1回に限り算定
  • 産科若しくは産婦人科を標榜している医療機関から紹介された妊娠中の患者について、診療に基づき、頻回の情報提供の必要性を認め、患者の同意を得て、患者を紹介した別の保険医療機関に情報提供を行った場合は、月1回に限り算定
  • 他の保険医療機関から紹介された妊娠中の患者について、当該患者を紹介した他の保険医療機関からの求めに応じ、患者の同意を得て、診療状況を示す文書を提供した場合は、3月に1回に限り算定

連携

ここでは、医科との連携に重要な栄養サポートチーム等連携、周術期の口腔機能管理と、医師が歯科と連携することで算定する点数について取り上げます。算定実績が極端に少ない在宅患者連携指導料、在宅患者緊急時等カンファレンス料については取り上げていません。

1. 栄養サポートチーム等連携加算(NST)

栄養サポートチーム等連携加算は、歯科疾患在宅療養管理料と在宅患者訪問口腔リハビリテーション指導管理料の加算です。

栄養サポートチーム等連携加算は、栄養サポートチーム等連携加算1(NST 1)と栄養サポートチーム等連携加算2(NST 2)の2種類があります。それぞれ対象となる患者と連携の内容が異なります。

項目 栄養サポートチーム等連携加算1
(NST1)
栄養サポートチーム等連携加算2
(NST2)
点数 80点 80点
対象患者 他の保険医療機関に入院中の患者 介護福祉施設、介護老人保健施設、介護医療院、介護療養施設、特定施設*、地域密着型特定施設、認知症対応型共同生活介護に入所中の患者
連携
  • 患者の入院している他の保険医療機関の栄養サポートチーム、口腔ケアチーム又は摂食嚥下チーム等の構成員として診療を行う。
  • カンファレンス及び回診等に参加する。
  • その結果を踏まえて口腔機能評価に基づく管理を行う。
  • 入所施設等で行われた、経口による継続的な食事摂取を支援するための食事観察または介護施設職員等への口腔管理に関する技術的助言・協力及び会議等に参加する。
  • その結果を踏まえて口腔機能評価に基づく管理を行う。
算定 カンファレンス等に参加した日から起算して2月以内に管理計画を策定した場合に、月に1回を限度に算定する。 食事観察等に参加した日から起算して2月以内に管理計画を策定した場合に、月に1回を限度に算定する。
注意点 患者が入院している病院で栄養サポートチーム加算が算定されていない場合でも、歯科疾患在宅療養管理料の栄養サポートチーム等連携加算1は算定できる。 患者が入所している介護保険施設で経口維持加算(Ⅱ)が算定されていない場合でも、歯科疾患在宅療養管理料の栄養サポートチーム等連携加算2は算定できる。

2回目以降は当該月にカンファレンス等に参加していない場合も算定できますが、少なくとも前回のカンファレンス等の参加日から起算して6月を超える日までに1回以上参加する必要があります。

栄養サポートチーム等連携加算1(NST 1)

NST1は他の保険医療機関に入院中の患者が対象です。

患者の入院している他の保険医療機関の栄養サポートチーム、口腔ケアチーム、摂食嚥下チーム等の多職種からなるチームの構成員としてカンファレンス及び回診等に参加し、それらの結果に基づいて管理計画を策定した場合に算定するものです。

患者が入院している病院で栄養サポートチーム加算が算定されていない場合でも算定できます。

栄養サポートチーム等連携加算2(NST 2)

NST2は介護福祉施設、介護老人保健施設に加え、介護医療院、介護療養施設、特定施設、地域密着型特定施設に入所中の患者、認知症対応型共同生活介護を受けている患者も対象です。

入所施設で行われた、経口による継続的な食事摂取を支援するための食事観察又は介護施設職員等への口腔管理に関する技術的助言・協力及び会議等に参加し、それらの結果に基づいて管理計画を策定した場合に算定します。

患者が入所している介護保険施設で経口維持加算(Ⅱ)が算定されていない場合にも算定できます。

2. 周術期の口腔機能管理

周術期の口腔機能管理に関する主な項目は、周術期等口腔機能管理計画策定料(周計)と周術期等口腔機能管理料です。

これらは、がん患者等の周術期等における口腔機能の管理を評価するもので、チーム医療を推進し、人工呼吸管理時の気管内挿管による誤嚥性肺炎等の術後合併症等の予防を目的としたものです。

周術期等の算定項目のイメージ

周術期等口腔機能管理計画策定料(周計)

周術期等口腔機能管理計画策定料の対象患者は、がん等に係る全身麻酔による手術又は放射線治療、化学療養若しくは緩和ケアを実施する患者です。

手術等にかかる一連の治療を通じ1回限り300点を算定します。

術前に周術期等口腔機能管理計画を策定せずに、術後に当該計画を策定した場合でも、周術期等口腔機能管理計画策定料を算定することは問題ありません。

周術期等口腔機能管理計画策定料(周計)300点

周術期等口腔機能管理計画書には次のような内容を記載します。

  1. 基礎疾患の状態・生活習慣
  2. 主病の手術等の予定
  3. 口腔内の状態等(現症及び手術等によって予測される変化等)
  4. 周術期等の口腔機能の管理において実施する内容
  5. 主病の手術等に係る患者の日常的なセルフケアに関する指導方針
  6. その他必要な内容
  7. 保険医療機関名及び当該管理の担当歯科医師名等の情報

周術期等口腔機能管理料

周術期等口腔機能管理料は周術期等口腔機能管理計画策定料に規定されている管理計画に基づき歯科医師が口腔機能の管理を行い、かつ管理内容に係る情報を文書により提供した場合に算定します。

周術期等口腔機能管理料は、周(Ⅰ)、周(Ⅱ)、周(Ⅲ)の3種類があります。

周術期等口腔機能管理料(Ⅰ)・(Ⅱ)・(Ⅲ)

このうち周(Ⅱ)は歯科診療所ではなく、手術を実施する病院の歯科が入院患者に対して算定するものです。

周(Ⅰ)及び周(Ⅱ)は、頭頸部領域・呼吸器領域・消化器領域等の悪性腫瘍の手術、心臓血管外科手術、人工股関節置換術等の整形外科手術、臓器移植手術、造血幹細胞移植、脳卒中等に対する手術の際に実施します。

周(Ⅰ)は手術前に1回のみ280点、手術後は、手術を行った日の属する月から起算して3月以内に3回を限度として190点を算定します。

周(Ⅱ)は入院中の患者に対し手術を実施する病院の歯科が算定するもので、手術前に1回のみ500点、手術後は、手術を行った日の属する月から起算して3月以内に月2回を限度として300点を算定します。

なお、脳卒中等による緊急手術後に早期に口腔機能管理の依頼を受けた場合でも、周計及び周(Ⅰ)、周(Ⅱ)は算定できますが、手術前の点数は算定できません。

周(Ⅲ)は、がん等にかかる放射線治療、化学療法又は緩和ケアを実施する患者の口腔機能を管理するために、周計を算定した日の属する月から月1回を限度として200点を算定します。

周術期等における口腔機能管理のイメージ(病院に歯科がある場合)

周術期等における口腔機能管理のイメージ(病院に歯科がない場合)

3. 医科が歯科と連携することで算定する点数

歯科との連携により医科の算定できる主なものは、次の3つです。

  1. NSTに歯科医師が参加することを評価する「歯科医師連携加算(50点 栄養サポートチーム加算の加算)」。
  2. 歯科治療を目的として歯科医療機関に情報提供した場合に算定する「歯科医療機関連携加算(100点 診療情報提供料(Ⅰ)の加算)」。
  3. 歯科診療を担う別の医療機関の求めに応じ、患者の同意を得て検査結果、投薬情報等を文書により提供した場合に算定する「診療情報連携共有料(120点3月に1回)」。
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