訪問診療に関する時間と報酬

訪問診療の診療報酬には、「○○分以上」と実施時間が算定要件になっているものがいくつかあります。

ここでは、訪問診療に関連する診療報酬の項目から、時間についての条件があるものを整理します。

1. 実施時間が算定要件になっている診療報酬項目

訪問診療に関する診療報酬・介護報酬の中で実施時間が算定要件にあるものは、次の6項目です。

保険 算定項目 時間 備考
医療保険 歯科訪問診療料 20分以上 20分未満は低い点数になる
訪問歯科衛生指導料 20分以上 20分未満は算定不可
在宅患者訪問口腔リハビリテーション指導管理料 20分以上 20分未満は算定不可
小児在宅患者訪問口腔リハビリテーション指導管理料 20分以上 20分未満は算定不可
摂食機能療法 15分以上 15分未満は算定不可。30分以上の場合は15分~30未満より高い点数になる。
介護保険 歯科衛生士等居宅療養管理指導 20分以上 20分未満は算定不可

医療保険の中で実施時間が算定要件にある項目は、カルテとレセプトに実施の開始時刻と終了時刻を記載する必要があります。

また、介護保険の歯科衛生士等居宅療養管理指導の場合には指導の開始・終了時刻は、実施記録に記載します。

2. 時間の重複が認められないもの

訪問診療での実施時間が算定要件になっている診療報酬項目には、時間の重複が認められないものがあります。

同じ患者さんの歯科訪問診療と訪問歯科衛生指導の実施時間や歯科衛生士等居宅療養管理指導の実施時間の重複は認められません。

実施時間の重複

歯科医師の行う歯科訪問診療の時間と歯科衛生士が行う訪問歯科衛生指導または歯科衛生士等居宅療養管理指導の時間が重複すると返戻の対象になります。

3. 歯科訪問診療料

歯科訪問診療料は、1つの建物内で同じ日に何人を診るかによって点数が異なります。さらに、診療時間が20分未満の場合は、所定の場合の点数より低いものになります。

人数 20分以上 20分未満
歯科訪問診療1 1人 1,100点 880点
歯科訪問診療2 2~9人 361点 253点
歯科訪問診療3 10人以上 185点 111点

診療時間に含めない時間

歯科訪問診療料を算定する際には、その開始時刻と終了時刻をカルテやレセプトに記載する必要があります。その際、次のものは診療時間に含めません。

  • 診療前後の準備・片付け
  • 患者の移動に要した時間
  • 併せて実施した訪問衛生指導にかかわる時間
  • 患家に滞在、宿泊した場合の滞在時間

同一日に同一患者に複数回訪問

施設等での訪問診療では、Aさんを診て、次にBさんとCさん。最後にAさんのところに戻って確認というように、同じ日に同じ患者さんに複数回の診療を行うことがあります。この場合は、Aさんへの複数回の診療時間の合計がその日のAさんの診療時間となります。

同一日に同一患者に複数回訪問

歯科訪問診療料 20分ルールの例外

歯科訪問診療料は、20分未満の場合には、所定の点数より低い点数を算定します。

ただし、次の場合には、診療時間が20分未満の場合でも、20分以上の場合の点数を算定します。

やむを得ず治療を中止した場合 20分以上の診療が困難な場合
対象となる歯科訪問診療料 歯科訪問診療料1・2 歯科訪問診療料1
患者の状態 治療中に患者の容体が急変し、医師の診察を要する場合 「著しく歯科診療が困難な者」に準じる状態、または要介護3以上に準じる状態等
診療録記載 急変時の対応の要点 20分以上の診療が困難である理由を含め、患者の状態等

20分未満でも70/100を乗じたものを算定しない「20分ルールの例外」のケースは、歯科訪問診療料の種類や患者さんの状態、カルテに記載すべき事項が定められているので注意が必要です。

時間関連の加算

■診療時間加算
訪問先における診療時間が1人に対して1時間を超えた場合、30分またはその端数を増す毎に歯科訪問診療料に100点を加算します。早見表にすると次のようになります。

診療時間 歯科訪問診療1 歯科訪問診療2 歯科訪問診療3
60分まで 1,100点 361点 185点
61~90分まで 1,200点 461点 285点
91~120分まで 1,300点 561点 385点

診療時間は1人あたりの時間です。複数の患者に対して歯科診療を行った場合の診療時間を合算するものではありません。

■緊急・夜間・深夜の訪問診療加算

加算科目と加算割合 歯科訪問診療1
(1,100点)
歯科訪問診療2
(361点)
歯科訪問診療3
(185点)
緊急歯科訪問診療加算 425点 140点 70点
 所定点数と緊急加算の合計
(概ね午前9時~午後6時)*
1,100+425=1,525点 361+140=501点 185+70=255点
夜間歯科訪問診療加算 850点 280点 140点
 所定点数と緊急加算の合計
(概ね午後6時~午後10時)*
1,100+850=1,950点 361+280=641点 185+140=325点
深夜歯科訪問診療加算 1,700点 560点 280点
 所定点数と緊急加算の合計
(概ね午後10時~翌朝6時)*
1,100+1700=2,800点 361+560=921点 185+280=465点

緊急歯科訪問診療加算とは、別に厚生労働大臣が定める時間(概ね午前9時~午後6時)において、入院中の患者以外の患者に対して診療に従事している場合に緊急に行う歯科訪問診療に加算するものです。緊急な場合とは、手術後の急変等が予想される場合をいいます。

夜間歯科訪問診療加算は、概ね午後6時~午後10時に歯科訪問診療を行った場合、深夜歯科訪問診療加算は、概ね午後10時~翌朝6時に歯科訪問診療を行った場合に算定するものですが、医院の標榜時間内である場合には算定できません。

4. 訪問歯科衛生指導料

訪問歯科衛生指導料は、単一建物診療患者に対して1対1で20分以上実施した場合、単一建物診療患者数に応じて算定します。1対1で20分未満の場合には算定できません。この時間には、準備や移動に要した時間等は含まれません。

5. 在宅患者訪問口腔リハビリテーション指導管理料

歯科医師が20分以上実施した場合に算定できます。20分未満の場合には算定できません。従って、在宅患者訪問口腔リハビリテーション指導管理料を算定する際には、歯科訪問診療は20分以上になります。

6. 小児在宅患者訪問口腔リハビリテーション指導管理料

歯科医師が20分以上実施した場合に算定できます。20分未満の場合には算定できません。従って、小児在宅患者訪問口腔リハビリテーション指導管理料を算定する際には、歯科訪問診療は20分以上になります。

7. 摂食機能療法

医師又は歯科医師の指示の下に言語聴覚士、看護師、准看護師又は歯科衛生士が行う嚥下訓練は、摂食機能療法として算定します。

対象患者 摂食機能障害を有する患者 脳卒中の患者であって、摂食機能障害を有するもの 脳卒中の患者であって、摂食機能障害を有するもの
時間 30分以上の場合 15分以上30分未満の場合
点数 185点 130点
算定回数・期間 1月に4回に限り算定する。ただし、治療開始日から起算して3月以内の患者については、1日につき算定できる。 脳卒中の発症から14日以内に限り、1日につき算定できる。

摂食機能障害を有する患者であっても、脳卒中の患者でなければ、15分以上30分未満の場合(130点)は算定できません。

8. 歯科衛生士等居宅療養管理指導

歯科衛生士等居宅療養管理指導は、歯科衛生士等が、利用者を訪問し、実地指導を1対1で20分以上行った場合に算定します。20分未満の場合は算定できません。

適切な保険請求を行うための 訪問歯科 医療事務Q&A集 2022年改定対応

保険請求の不安を解消

訪問診療における医療事務、保険請求の疑問や不安が解決できる!

最新の医療・介護保険に対応した全145項目の疑問と回答を簡潔にまとめた小冊子です。

内容を見る

Copyright©Nihon Houmonshika Kyokai All Rights Reserved.