訪問歯科を始めるために

何から始めればよいか

まずはご自身の医院に通院されていた高齢者の患者様さんを徹底フォローすることをお勧めします。
具体的には、医院の過去3年間のカルテから80歳以上の方をリストアップし、訪問診療をおこなっていることを電話で知らせるだけで、確実に訪問診療の依頼が出てきます。

例えば20名をリストアップし、その方へ電話でのリコールをおこなうと、10名は外来に来られますが、残り10名は通院が困難な状態になっていることに気づかれるはずです。その中で2名くらいが義歯などに問題を抱えていて、訪問診療を依頼してきます。

ざっくり80歳以上の患者様さんにリコール電話をすれば1割の方が訪問診療を依頼してくることがわかっています。
これが一方的なお知らせの「リコール葉書」ですとほとんど効果がありません。患者様さんが認知症になっている場合などもあるので、双方向のコミュニケーションが必要になるのです。
こうして、まずは一人目の患者様さんへの訪問をしてみてください。

ちなみに、日本訪問歯科協会のコールセンターの受付データでは、6月と12月の依頼が他の月より30%以上多くなっています。この月の1、2ヶ月前より告知活動を始めると、立上りは比較的スムーズにいくようです。

訪問診療を始めるための手続き

保険医療機関の届出をされている医院では、訪問診療をおこなうための特別な届出はありません。しかし、次の届出がなされているか確認されることをお勧めします。

(1)歯科点数表の初診料の注1に規定する施設基準(院内感染防止対策に関する施設基準)
(2)歯科訪問診療料の注13に規定する基準の施設基準に係る届出
(3)生活保護法及び中国残留邦人等支援法の指定申請
・生活保護法及び中国残留邦人等支援法指定医療機関指定申請
・生活保護法及び中国残留邦人等支援法指定介護機関指定申請

さらに、次の届出をおこなっておくと診療報酬に関連する加算を算定できます。

(4)在宅療養支援歯科診療所の施設基準に係る届出
(5)かかりつけ歯科医機能強化型歯科診療所の施設基準に係る届出
(6)在宅歯科医療推進加算の施設基準に係る届出
(7)歯科訪問診療料の地域医療連携体制加算の施設基準に係る届出
(8)歯科疾患在宅療養管理料の注4に規定する在宅総合医療管理加算及び在宅患者歯科治療総合医療管理料の施設基準に係る届出

歯科医師一人しかいないが、訪問診療はできるか

ご自身の医院の状況や、訪問診療をおこなう地理的範囲、対象となる訪問先が施設か在宅かによって採算性を検討する課題が違ってくるので一概には言えません。訪問診療を始めたことにより全体の収入が下がるというのは、ほとんどが1件の訪問に対する移動時間が長すぎる場合です。

そのため、医院から片道20分圏内が訪問エリアとしては好ましいでしょう。実際に計算をするには、実働1時間当たりの収入を医院の過去3年間のデータから、総外来時間と延べ患者様数を算出し、1時間あたりの収入をベースにして検討されるとよろしいかと思います。

歯科衛生士がいなくても大丈夫か

訪問診療は、歯科衛生士がいなくても始めることはできます。ただし、継続的な口腔ケアまでフォローする場合には、歯科衛生士がいる方が好ましいでしょう。

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